本書を書くに至った経緯
私、中納徹は15歳よりカートや自動車のレースに参戦後、2000年に自身のドライバーとしての本格的な活動を終えたのですが、その後から現在までイギリスや日本にて現役レーシングドライバーを指導させて頂くお仕事や、一般の方に安全にサーキットを走って頂くお仕事をさせて頂いており、今もなお、日々ドライビングの研究に取り組める環境に身を置いています。
ドライビング研究においては私自身が走った経験は貴重なものですが、それ以上に一般の方の助手席でスポーツドライビングの指導をさせて頂いた経験も非常に役に立っていると感じています。所謂、素人と言われる方に対してサーキットで助手席から運転を指導する際は、自分自身だけで走る時以上に、高速走行をしながらも安全を確保するという難しい条件が突きつけられます。「シンプル且つ的を抑えた判断、指示、説明」を行おうと努力する中で、走りに関する新たな気付きを得られると感じます。
ドライバーとしては現役当時大激戦だった鈴鹿や岡山国際サーキットでのFJ1600レース、F4やフォーミュラトヨタに参戦させて頂いたり、イギリスのフォーミュラヴォグソールという世界中から強豪が集まるレースへの参戦を通して、速く走る事だけを考えられる貴重な経験をさせて頂いた事で、ドライビングに関する知識や経験、私自身の中の引き出しを沢山蓄積できたと考えています。また、世界中の強豪が集まっていたかつての英国フォーミュラフォード選手権、フォーミュラBMW UK選手権、フォーミュラルノーUK選手権等で、日本人やイギリス人の若手ドライバーとともに日々切磋琢磨しながら、レーシングドライビングやモータースポーツについて探求し、努力し、戦った経験からも、非常に多くの事を学ぶ事が出来たと自負しています。
そんな中、2013年1月に日本の某レース雑誌の編集者の方から取材を受けた際、車での移動中にお話しさせて頂いた、私自身が当たり前と考えていた「レーシングドライビング理論」に強く興味を持って頂いた事は驚きでした。
私は日本で走るレーシングドライバーのレベルが非常に高い事を知っているつもりですが、その取材を通じて、その非常に高いレベルというのは、車やタイヤやサーキットなどの特定の条件下でのみ発揮されるものである可能性がある事を知りました。
お金や政治の面を抜きにして、万が一、F1のワールドチャンピオンが日本から出て来ない理由の一つが、イギリスで当たり前に教えられるドライビングテクニック知識の欠乏だとしたらそれは非常に惜しい事です。
また、私が考えるレーシングドライビングの理論は、より安全に、そしてより速くサーキットを走るために知っていて損をしないものですので、趣味でサーキットを走られる方や、これからサーキットデビューをしたい方、自動車レースへのステップアップを予定しているカートドライバーの方にも役立つのではと考え始めました。
本書を執筆しよう思っている旨を、私の身近にいるレーシングドライバー、カートレーサー、ジェントルマンレーサー、インストラクター、メカニックの方々へ打ち明ける度に、皆様より読んでみたいというお声を頂いた事もあり、日本に比べて路面のミューが低い場合が殆どのイギリスのサーキットで、イギリスのレース屋が代々受け継いできたドライビングテクニックや、イギリスの老舗レーシングスクールが教えるドライビングテクニック、これまで私が個人的に試し、失敗し、学んできた独自の理論とメソッドを交えつつ、スポーツドライビング、レーシングドライビングというものの基本を言葉(文章)として残しておこうと考えるに至り、ペンを持たせて頂きました。
レーシングドライビングに携わった27年間で学んできた全てをバックグラウンドに、その中でも一番肝心な部分だけをまとめた本書が、日本全体のモータースポーツの安全性とドライビングレベルの向上、そして日本国内モータースポーツの隆盛に繋がればと心からお祈りしております。
本書はこのような方々に向けて書かれています
本書は以下のような方に読んで頂ければとの思いから書かれました。本書の内容を理解する事で、世に溢れるドラテク情報やプロドライバーからのアドバイスを、より深く理解し取り入れられるようになるでしょう。
- サーキットでこれから走ってみたい初心者の方
- ラップタイムが頭打ちして悩んでいる方
- ご子息がレーシングカート活動中の親御様方
- クラッシュ癖を克服したい方
- カートから四輪への切り替えが上手く行かない方
- レーシングメカニックやエンジニアの方、または目指している方
- レーシングドライビングの基礎を学びたい方
- プロドライバーという立場だが実は走り方で悩んでいる方
- レーシングドライビングの教え方を学びたい方
- 世にあるドラテク本の内容をより深く理解したい方
本書の内容
基本中の基本にこだわる
本書「レーシングドライビング」は、車を高速でドライビングするに当たっての基本中の基本を1冊の本(126ページ)にまとめたものです。
日本国内には応用編とも言える難しい運転テクニックを、それ単体ではいとも簡単にこなすドライバーが非常に多いのですが、そのテクニックとリンクすべき別のテクニックが抜けていたり、複数のテクニック間のコーディネートがイメージ出来ておらず、レーシングドライビングという1つのパッケージングがワンパターンな事により、路面コンディションや車やタイヤの変化に対して順応性が低いドライバーの数もまた多いように感じます。
本書では、タイヤの表面とサーキットの路面とドライバーの間で何が起きているのかを解説しながら、各工程ごとにドライバーは何を感じ、考え、判断し、行動するべきかを順を追って説明して行きますので、趣味のサンデーレーサー、峠の走り屋(是非サーキットで走ってください!)、走行会参加者、カートレーサー、カートレーサーの保護者、プロフェッショナルレーシングドライバー、セミプロレーサー、メカニック、エンジニア、レーシングドライビングインストラクターなど、自己流もしくは人からの指導に頼って速さを磨いてきたドライバーを始め、他人への指導を行っているプロドライバーにも、本書を読む事でレーシングドライビングの基本をより明確にして頂けると思います。
92枚のオリジナル画像を使用
ドライビング理論を言葉だけで読んでもイメージは湧きにくいものですので、本書では92枚のイラストを使用しています。イラスト内にはそのイラスト内で鍵となる要点も書かれていますので、文字列が苦手な方にも親しんで貰えると思います。
「レーシングドライビング」目次
34章から構成される本書の目次は下記の通りです。具体的にどのような事が書いているのかを立ち読み感覚で体験して頂くために、本ウェブサイト内で幾つかの章の内容を簡潔化して書き出してみましたので、宜しければご覧ください。青いリンクが付いている章をご覧頂けます。
はじめに
第1章 脳と体の時間差
第2章 体と車(タイヤ)の距離
第3章 目から得る情報(大きくワイドな視界+集中的な視線)
第4章 心と体の葛藤
第5章 タイヤ(スキッド)を感じやすい座席ポジション(車の一部に)
第6章 タイヤグリップをイメージ化する
第7章 荷重移動のイメージ
第8章 スキッドとは
第9章 スキッドの原因 ドリブンからドライブ
第10章 直線(アクセル全開)で過ごす時間
第11章 荷重移動を無視したタイヤグリップと最速のコーナーリング
第12章 荷重移動を無視したタイヤグリップと最速のストレート
第13章 「最速のコーナーリング」か「最速のストレート」か 前編
第14章 「最速のコーナーリング」か「最速のストレート」か 後編
第15章 コーナーにおけるドライバーの作業
第16章 加速アクセル
第17章 その1 バランススロットル
第17章 その2 バランススロットルの種類1
第17章 その3 バランススロットルの種類2 前編
第17章 その4 バランススロットルの種類2 後編
第17章 その5 バランススロットルの種類3
第18章 ハンドル
第19章 エンジンブレーキ
第20章 曲げる(バランスド)ブレーキ
第21章 シフトダウン
第22章 止めるブレーキ
第23章 姿勢作り
第24章 手前のコーナーの出口から直線、コーナーの始まりまで
第25章 左足ブレーキ
第26章 V字型コーナーリング
第27章 雨のドライビング(ウェットドライビング)
第28章 ローテーション量からコーナー毎に走りのイメージを適用する
第29章 コーナータイプ別攻略 ヘアピン的複合コーナー
第30章 コーナータイプ別攻略 段々きつくなる複合コーナー
第31章 コーナータイプ別攻略 段々ゆるくなる複合コーナー
第32章 下り坂、上り坂でのドライビング
第33章 バンクの付いたコーナーでのドライビング
第34章 各章のキーワードのまとめ
著者の紹介
「レーシングドライビング」製本版の購入方法
「レーシングドライビング」製本版
価格: 29800円
頁数: 127ページ(表紙含む)
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本書に関する注意事項
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