中納 徹 著 究極のドラテク本 レーシングドライビング 10

荷重移動の事を忘れ、タイヤグリップの合計を100としてコーナーリングの種類を2種類に分けてみましょう。

コーナーの中では弧を描きながら旋回、方向転換をしていきますが、まずは旋回速度を出来るだけ高く保つ「最速のコーナーリング」です。

コーナーに対して旋回を開始するところとコーナー出口で一番外側にはらむところをクリッピングポイントを通過点として繋げると、最も半径の大きい弧を描けます。弧の半径が大きいと旋回速度を高く維持できますので、このような走りを「最速のコーナーリング」とします。

次に「最速のストレート」。

クリッピングポイントからコーナー出口で一番外側にはらむところをより緩やかな弧にするために、コーナーに対して旋回を開始するところとクリッピングポイントまでに描く弧の半径を小さくする事で、コーナー出口の脱出速度を上げて、コーナー後に控えるストレート速度を速くする走りを「最速のストレートとします」

「最速のコーナーリング」では旋回速度を高く維持出来る事でコーナーリング時間を短く出来そうな点や、減速に要する減速が少なく済みそうな点がメリットと言えそうですが、コーナー出口でアウト側へはらみ切るまでタイヤグリップを旋回方向へ100使い続けますので、加速方向へタイヤグリップを使える開始タイミングが遅れ、その後のストレート速度が伸びないのがデメリットとなります。

それとは逆に、「最速のストレート」ではクリッピングポイントからタイヤグリップを加速方向に使えるキャパシティが生まれますので、加速開始を早くできる事でその後のストレートの速度が伸びそうな点がメリットですが、旋回開始地点からクリッピングポインまでの弧がきつくなりますので、コーナーの中での旋回速度が下がるデメリットがあります。

コーナー毎に「最速のストレート」と「最速のコーナーリング」のどちらを当てはめるかを考える際に最も大切な要素は、そのコーナーの先に続くストレートの長さです。ストレートが長い場合は「最速のストレート」、ストレートが短い場合は「最速のコーナーリング」を当てはめる場合が多いでしょう。

サーキットには回り込むコーナーや、シケインなど、所謂複合コーナーが沢山ありますし、コーナーの形状は千差万別。書籍「レーシングドライビング」では「最速のストレート」と「最速のコーナーリング」を図解入りで説明しつつ、さらに深く考察しております。

モータースポーツで一番大切なこと
01 脳と体の時間差
02 体と車(タイヤ)の距離
03 目から得る情報
04 心と体の葛藤
05 座席ポジション
06 タイヤグリップをイメージ化する
07 荷重移動のイメージ
08 スキッドとは
09 直線で過ごす時間
10 「最速のコーナーリング」と「最速のストレート」
11 コーナーにおけるドライバーの作業
12 バランススロットル