やってはいけないブレーキペダルの踏み方の記事のバナー

やってはいけないブレーキペダルの踏み方 5選

この記事では、サーキット走行で「やってはいけないブレーキング」とは何なのか、

何故やってはいけないのか、そして、やらなくするコツをお話しますので、サーキット走行でスピン、コースアウト、事故やクラッシュを回避するコツを学ぶことができます。

誰しも、サーキット走行ではスピン、コースアウト、事故やクラッシュを起こしたくないものですよね。サーキット走行を初めて行う初心者や中級者の方にとってはなおさらと思います。

ものすごく正直にお話ししますと、色々な経験レベルの方の助手席に乗っていますもので、この方は私が隣に乗っていなかったらこのコーナーで、あのコーナーでスピンするだろうなと、私には実は事前に分かったりします。

人の目を見るだけで「この人3分後にスピンしそう」とか、初めて握手をした瞬間に「この人はクラッシュしそうだ」と分かるんです、というたぐいの怪しいお話ではありません。

実はやった方が良いドラテクが数多くあるのと同時に、やってはいけないドラテクも数多くあります。

やってはいけないほうにも「ドラテク」と呼ぶのは、なにやらはばかりますが、分かりやすさ優先という事でお許しください。

この記事を書くにあたり、やってはいけないドラテクを紙に書き出してみたのですが、実に20個以上思いつきました。

あまりにも数が多いので、最もスピン、コースアウト、事故やクラッシュの原因に直結しそうな、やってはいけないドラテクだけをさらに厳選したところ、ふたつの「やってはいけないドラテク」が残りました。

その中でも今回は「ブレーキペダルの踏み方」 についてお話したいと思います。

ドラテク学習に熱心な方だと、あんな話をするのかな?と想像されると思いますが、いつも助手席でサーキットを走っているドライビングコーチ独自の目線でお話していきますので、あなたにとっての新しい発見があると思います。

是非最後までお読みください。

様々なパターンの「やってはいけないブレーキペダルの踏み方」があり、それぞれに説明していくのでご安心ください。

大筋ですが、「やってはいけないブレーキペダルの踏み方」を行ってしまう事で起こりえる問題としては

コーナーを曲がれずに真っすぐコースオフ、サーキットから外れてしまう、

コーナーの進入でクルッとスピンしてしまう可能性が上がる、などだと思います。

「アクセルペダルからブレーキペダルへの右足の移動が遅い」問題

「ブレーキペダルの踏み方」の間違いで、まず注意をしたいのは「アクセルペダルからブレーキペダルへの右足の移動が遅い」問題です。

左足でブレーキを踏んでいますという方には関係ないですが、右足でブレーキを踏む場合ということでご理解ください。

例えば時速200キロで直線を走って来て、旋回速度が50キロのヘアピンコーナーを曲がると仮定します。

後ほど話に出てきますので、5速から3速までシフトダウンも行うと仮定しておきましょう。

このように、かなりの止めるブレーキ、フルブレーキを要する場合は特に、ブレーキングの開始で、アクセルペダルからブレーキペダルへの移動を出来るだけ素早く行うようにしたいところです。

何故、右足の移動スピードを速くしたいかと言うと、ブレーキペダルを踏む直前までアクセルペダルを踏み続けたいことがひとつ

そして、もうひとつが、アクセルペダルとブレーキペダルのどちらも踏んでいない、空走距離を出来るだけ短くしたいからです。

この右足の移動スピードがゆーーーーっくりになってしまう方が非常に多いんですが、こういう止めるブレーキが長い状況ですと、アクセルペダルを離した瞬間に、最速でブレーキペダルへ右足を移動させてください。

サーキット走行 アクセルペダルからブレーキペダルへの右足の移動スピードは速く

肉体的に右足を動かすスピードを上げる必要がありますが、実際のサーキット走行中だけの練習ではなかなか回数をこなせないので、停車中、エンジン停止中の車の中でも練習ができると思います。

足元を目視することなく、右足にアクセルペダルとブレーキペダルの位置を覚えさせるというのが一つ目のゴールです。

また、感覚的には一般道での走行中に、四つ角で突然、人や動物や物が目の前に飛び出してきた時に

とっさにブレーキペダルへ右足を踏み変えるような移動スピードをイメージしましょう。

右足の移動スピードを上げる練習に加えて、サーキットを走られる際は、幅の狭いシューズを選ぶことも意外と大切です。

アクセルペダルとブレーキペダルが近い車では、アクセルペダルから右足を離す際に、ブレーキペダルに靴が引っかかるなんてことも起こりやすく、幅の狭いシューズの有り難みを、より強く感じると思います。

ペダル間の右足の移動は速く!意識していきましょう!

「ブレーキを強く踏めない」問題

「ブレーキペダルの踏み方」の間違いで次に注意をしたいのは

「ブレーキを強く踏めない」問題です。

レーシングドライビングではブレーキペダルを強く踏むことが大切

何故「ブレーキを強く踏めない」ことが問題なのかと言うと、一番の理由は止めるブレーキを行う時間と距離が長くなってしまうからです。

例えば、時速200キロから時速50キロへの急激な減速は、一般道ではなかなか経験することは無いと思いますし

きちんと法規制を守っていれば、経験することすらできない速度域と思います。

そういう非日常的な「急激な」減速が必要なサーキット走行においては、ブレーキペダルを非日常的に「強く踏む」ことが求められます。

助手席でコーチングしていて、ちから一杯にブレーキペダルを踏んでくださいとお伝えしても

中納調べでは、プロドライバーの50%ぐらいの力でしか踏めない方が、初心者、中級者の場合は9割以上を占める感触です。

ですので、「もっと強くブレーキペダルを踏んでください」と何度も繰り返し伝えることで

お二人につき一人ぐらいの方が、プロの80%ぐらいの強さでブレーキペダルを踏めるようになります。

一方で、お二人につきお一人は、何度トライしても、なかなかブレーキペダルを強く踏めないわけですから、

想像されるよりも強めにブレーキペダルを踏むイメージを持たれても大丈夫だと思います。

多くの場合は、力いっぱいブレーキを蹴っ飛ばすぐらいの勢いをイメージされると、プロの80%ぐらいの強い踏みを出しやすいと思います。

ただし、雨が降っている時や、路面やタイヤなどの状況、ABSが付いていない車両、横Gが掛かりながらのフルブレーキをする場面など、

プロでもそーっとしかブレーキペダルを踏まない場合もありますので、十分にご注意ください。

「ブレーキを強く踏み続けられない」問題

「ブレーキを強く踏めない」問題と同じぐらいの度合いで起こるのが

「ブレーキを強く踏み 続けられない」問題です。

先ほどお話しした、サーキットではブレーキペダルを強く踏みましょう、というお話は、アクセルペダルからブレーキペダルへ右足を踏み変えた瞬間だけのお話ではありません。

止めるブレーキを行う時間と距離を短くするには、その踏み始めの強く踏んだ力を維持して、ブレーキペダルを強く踏み続けることも大切になります。

レーシングドライビングではブレーキペダルを強く踏み続けることが重要

私が指導をさせて頂いた場合、初心者の方でも半数ぐらいの方が、理想の8割ぐらいの強さでブレーキペダルを踏めるようになるんですが、

多くの場合、それはブレーキペダルを踏み始めるときだけのことで、止めるブレーキの後半でもブレーキペダルを強く踏み続けられる人の割合はかなり少ないです。

使う筋肉の場所は異なりますが、よく似た脳から筋肉への指示としては、握力計で握力を測る時を想像してもらえるとわかりやすいと思います。

サーキット走行でのブレーキの踏み方は、握力計を強く握り、そしてそのまま強く握り続ける感覚と似ています

握力計がお手元にない場合は、ご自身の左右の手を握り合う事でもイメージは可能です。

強くブレーキペダルを踏み続けるというのは、握力計を最大限強く握ると同時に、そのマックスの力で握り続ける感覚に似ていると思います。

ブレーキペダルを握力計に見立てて、右足でぎゅーーーっとチカラを絞り出し続ける感覚を、あなたの脳と体で再現していただければと思います。

「シフトダウン後にブレーキペダルを踏まない」問題

これもよくあるのですが「シフトダウン後にブレーキペダルを踏まない」問題もよく起こります。

この「シフトダウン後にブレーキを踏まない」問題とは、マニュアル車の場合に多いのですが、セミオートマの(パドルシフターの付いた)車でも起こります。

シフトダウンの作業に意識を使い過ぎてしまい、脳がブレーキを踏むという信号を送れなくなることで、

シフトダウンの作業の開始や完了時点を境にして、ブレーキペダルを踏む作業を停止してしまうという原因の場合がほとんどです。

サーキット走行では、シフトダウンに意識が行き過ぎ、ブレーキングが疎かになる方が多いです

まれに、シフトダウンさえ終われば、後はエンジンブレーキで減速ができると思い込んでいる方もおられますが

サーキット走行では、この思い込みは忘れて、止めるブレーキは、99.9%、フットブレーキで行うという意識を持ちましょう。

ここで仮定したヘアピンコーナーでは、止めるブレーキを「強く」かつ「長く」踏み続る事が最も大切なので

フットブレーキは継続したままで、5速→4速→3速のシフトダウンを行うようにしましょう。

「クリップ直前でブレーキを強く踏み足す」問題

「ブレーキペダルの踏み方」の間違い、いよいよ最後のひとつは、「クリップ直前でブレーキを強く踏み足す」問題です。

これは、止めるブレーキの終盤からトレイルブレーキ(曲げるブレーキ)の序盤辺り

つまり、これから曲がろうとしているコーナーの形、キツさ、曲がり具合が見えやすくなり始めるゾーンで起こります。

あ!まだ全然曲がれない速度だった!、と気づいて、やむを得ずブレーキを強く踏み足してしまう現象です。

サーキット走行でクリッピングポイントへ向かうところでブレーキペダルを踏み足す問題の図

「クリップ直前でブレーキを強く踏み足す」と、コーナーを曲がるためにタイヤの横方向グリップが欲しい立場の車とあなたから

あなた自身のブレーキペダルの踏み足し、つまり縦方向グリップの使用率の増強という行為によって、横方向グリップを奪い取ってしまいます。

つまりそのコーナーを曲がることを難しくしてしまったり、車が直進してしまったりします。

また、「クリップ直前でブレーキを強く踏み足す」と、例えば左コーナーの場合は、車の前荷重、厳密には右前方タイヤへの荷重が増えると同時に、

後荷重、左後方タイヤへの荷重が減ることにもなりますので、状況によっては、リアがクルっと滑り出しやすくなったりもします。

止めるブレーキの終盤からトレイルブレーキ(曲げるブレーキ)の序盤辺りでの理想は、徐々にブレーキペダルを踏む力を抜いていくことです。

詳しくは以前お届けした「トレイルブレーキ、曲げるブレーキってなに?」の記事をご覧いただくとして

何速まで落とした。かなりきついコーナーだった。前の周はブレーキを踏み足してしまった。など、

コーナーを通過するごとに脳の中に記録、記憶を取り、次の周に同じコーナーへアプローチする際には、その記録、記憶に基づいて準備をして

止めるブレーキの開始を手前にするであったり。止めるブレーキの時間を長めに取るであったりと、事前に対策案をまとめておくことが重要です。

そして、そもそもになりますが、止めるブレーキでのブレーキペダルを踏む力、踏み続け方をさらに磨きましょう。

そういった感じで、1周ごとに改善していくとよいと思います。

まとめ

ではこのブログ記事のまとめを行います。

「やってはいけないブレーキの踏み方」を改善することで、サーキット走行でのスピン、コースアウト、事故やクラッシュを回避しましょう、というお話でした。

「やってはいけないブレーキの踏み方」には

1 「アクセルペダルからブレーキペダルへの右足の移動が遅い」

2 「ブレーキを強く踏めない」

3 「ブレーキを強く踏み続けられない」

4 「シフトダウン後にブレーキペダルを踏まない」

5 「クリップ直前でブレーキを強く踏み足す」

などがあるとお話ししました。つまり

1 「アクセルペダルからブレーキペダルへの右足の移動を早くする」

2 「ブレーキを強く踏め」

3 「ブレーキを強く踏み続ける」

4 「シフトダウン後もブレーキペダル踏み続ける」

5 「クリップ直前でブレーキを強く踏み足さない状況をつくる」

という、やってはいけないことの逆の課題に取りくんでいきましょう!。